あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

神宮寺の言葉に、進藤は明らかに表情を変えた。
その顔は怒りを抑えきれないと言っているようだ。


「…桜、そろそろ失礼しようか。」


神宮寺は、そんな進藤をまったく気にしない様子で、私の背中を押すように歩き出した。

そんな私達に進藤は何も言わず、ただ鋭い目で睨んでいるだけだ。
何も言わずに睨まれる方が、恐怖を感じる。見えなくても背中に視線を感じて、チリチリと痛みを感じるようだ。


「あの…神宮寺社長、あんなことを仰って…大丈夫なのでしょうか?」


お店を出たところで、私は急いで神宮寺に尋ねた。
すると、神宮寺はクスクスと笑いながら、私の頬に手を添えた。


「たぶん…大丈夫では無いな。…あんなに怒るとは驚いたよ。桜、嫌な思いさせたな…でも、君が居てくれて助かったよ、ありがとう。」


神宮寺に“ありがとう”と言われるとは思わなかった。
驚きよりも、なんだか恥ずかしいような照れくさいような気持になる。

神宮司に触れられた頬が、急に熱くなってくる。


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