アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
二人のアゲハ
四葉と鳳雅の乗った高級車が、大学の校門前に着く。

すると市ノ瀬が運転席から降りる前に、後部座席がバン!!と開く。

「四葉!!」
揚羽が開け、四葉を呼んだ。

「揚羽くん!」
「鳳雅、早く降りろよ!四葉が降りれない」
「わかってるよ!てか、揚羽がまずそこ退け!」

渋々避けると、まず鳳雅が降りた。
そして揚羽が手を差し出す。
その手を握り、四葉が車を降りた。
そのまま揚羽は、四葉を抱き締めた。

「はぁ…会いたかった……」
四葉の肩に顔を埋め、揚羽が呟く。

「うん…」
四葉も揚羽にしがみつく。


「早く、行くぞ」
鳳雅の声かけで、二人は離れ手を繋いだ。

講義室に着き、三人は横に並び座る。
「あ、そうだ!
これ、見て!!」
講義が始まるまで少し時間があり、四葉はスマホを操作して二人に画像を見せた。

「ワンピース?」
揚羽が横から覗き、四葉を見る。
「うん!可愛いでしょ?」
「欲しいの?」
「うん、どう思う?似合うかな?」
「うん、似合うけど…」
「けど?」

「丈、短くね?」
揚羽と反対側の横から覗き、言った鳳雅。

「そう?」
「うん、僕もそう思う」
「でもこれから暖かくなるから、いいかなって!」

「「ダメだな」」

「そう…可愛いと思ったんだけどな!」
「違うのにしな?もっと、露出が少ないやつ」
「うん…
どんなのがいいかな?今度の新年祭で着たいの!」

「新年祭で?だったら、尚更そのワンピはダメだ。
…………僕が選んであげる」
そう言った揚羽。
四葉のスマホを取り、手際よく操作する。

「これは?」
「ん?こんな可愛いの、似合わないよ…」

「似合う」

「え?鳳雅くん?」

「な?四葉、これにしな?
僕が買ってあげるから!」
「え?揚羽くんが?」
「うん、僕にプレゼントさせて」
「うん、でも…揚羽くんからのプレゼントは、お母様が…」

「わかってる。
鳳雅にプレゼントされたことにして?」

「え?そんなの、おかしいよ…」
俯き、呟く四葉。
そして揚羽は、四葉の頭に手を乗せた。

「僕達は、秘密の関係なんだ。
だから、どんなにおかしくてもこんなやり方しかできないんだ」


「━━━━━━━━私に、力があればな……」
「力って?」
午前中の講義後トイレにいる、四葉。
洗面台の鏡に向かって呟いていた四葉に、友人の喜久(きく) 千歌(ちか)に声をかけられた。

「あ、千歌ちゃん」
「おはよ!四葉、力って何?」
「私に家を出て一人で暮らしていける力があったら、揚羽くんに辛い思いさせなくて済む。
鳳雅くんにも迷惑かけなくて済む」

「四葉…」
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