アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「おはよ」
「おはよう、鳳雅くん」

「鳳雅様、お嬢様をよろしくお願いします」
原内が頭を下げる。

「鳳雅さん、四葉をよろしくね。
四葉、行ってらっしゃい」
四葉の母親が玄関まで見送りに来た。

「はい。安全にお預かりします。
じゃあ、四葉。行こ?」
「うん。お母様、原内さん行ってまいります」
手を差し出す鳳雅の手を握り、四葉は屋敷を出た。


運転手の市ノ瀬(いちのせ)が後部座席のドアを開ける。
「四葉様、おはようございます」
「市ノ瀬さん、おはようございます。わざわざ毎日、ごめんなさい」
「そのようなこと、ご心配なさらなくて大丈夫ですよ」
微笑む、市ノ瀬。

「ほら、四葉。乗れよ」
「うん」
鳳雅が車内に四葉を促す。

「鳳雅くんも、いつもごめんね」
ゆっくり走り出す車内。
ポツリと四葉が言った。

「別に。俺は婚約者だしな」
「………いいんだよ。婚約破棄とかして」
「それは、四葉が傷つくことになるだろ?」
「私、そんなの構わない!
揚羽くんや鳳雅くんを傷つけるくらいなら。
鳳雅くんだって、普通に恋したいでしょ?
親が決めた相手じゃなくて、自分で」

「俺的には、別にお前と結婚してもいいよ」

「え?」
「つか!俺だって、四葉が好きだよ」

「え……でも、私…」
思いもよらない鳳雅の言葉に、戸惑う四葉。

「………フッ…!!」
「え?」
「冗談だよ!」
「え?」
「そんな、マジになるなよ…」
「あ、う、うん…ごめんね…」

俯く、四葉。

鳳雅は足を組み、窓枠に肩肘をついて四葉を見ていた。
(俺的には、勇気だして言ったんだがな……)

「つか、どっちにしても傷つくっつうの……」

「ん?何?」

「ううん。何もねぇよ…」
鳳雅は、四葉の頭をポンポンと撫でるのだった。






三人の複雑な三角関係━━━━━

揚羽と四葉は、愛し合っている。
しかし、結婚を許されるのは鳳雅。
鳳雅も実は、四葉を密かに想っている。



揚羽蝶と鳳蝶。

どっちが、四葉(幸せ)を手に入れられるのだろう。

< 3 / 46 >

この作品をシェア

pagetop