儚く甘い
友達と一緒にいると、前よりも緊張するようになったみわ。
体調を悟られないように振舞うことにも限界を感じ始めていた。

「卒業、できるかな」
就職に関する事前講習を受けていたみわと達哉。
達哉の隣の席に座っていたみわは、就職の話を半分も聞いてはいない。
聞いているのは大学を卒業するために必要な準備や手続きのことで、就職試験のノウハウはぼーっとしながら、聞き流すようにしている。

講義が終わるとみわは仲の良い友達に呼ばれて、友達の方へと向かった。

達哉は友達に手を引かれるようにして自分から離れるみわを、目で追う自分に気づく。

誰かの姿をこうして目で追うのは、久しぶりだ。

3年前、あの人を失ってからだ。
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