――ファルナシオン王宮、宰相執務室。

「勝手なことをなさったようですね、殿下」

 そう言うと、アンセルは不貞腐れた。

「勝手とはなんだ、ネビロス。偽りの聖女を追い出してやったのだぞ。感謝して欲しいね」

「偽りですか? 本当にそうだったら問題はありませんが」

 アンセル・ファルナシオン。
 彼ははっきり言って愚者である。今の地位に就いているのも、自分の力だと勘違いしている、間抜けな男だ。
 その男が、また過ちを犯した。聖女と認定した女を追い出し、勝手に新しい聖女を据えたのだ。
 新しい聖女ナタリアとやらに、どんなことを吹き込まれたのかは知らないが、疑いもせず信じてしまうなど、まさに愚の骨頂。
 しかし、この男がいなければ困るのも事実。
 十二年前、王太子を火事で亡くし、跡取りがいないファルナシオン王家には、いかにうつけであろうともアンセルは必要なのだ。

「それで、殿下はナタリアの力を直に御覧になったのですか?」