望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
32.終幕
 カレンは夢を見ていた。それは、夢の中にも関わらず夢であるとわかっている、夢。

 あれは、誰? と思いながらも、その人物が自分の母親であることを感じた。見た目はずいぶん若いのに。

 腕に抱いているのは赤ん坊。まだ、首も据わっていない。見た目だけでは、男か女か区別がつかない赤ん坊。

 隣にいる男の人は誰だろう。見たことのない人物。母親は、赤ん坊の顔を覗き込んで、そして隣の男の人を見上げている。そして二人、微笑み合う。

 ああ、そうか。

 生まれてきてよかったのか――。





< 261 / 269 >

この作品をシェア

pagetop