赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「美織を守れてよかった」

匡さんがそう微笑んだのを見て、驚いた。
こんなふうに柔らかく微笑むのを見たのは本当に久しぶりで……思わず嬉しさから泣きそうになったのをぐっと堪えなんとか笑みを返す。

ずっと、匡さんとの間にできてしまったと思っていた距離が、今はなくなっている気がした。

「生まれたばかりの美織が俺の指を握り返してきたとき、守ってやりたいという気持ちが湧いていたんだ。まだ小学生の俺が思ったことだ。漠然としたものだったし、単純に美織以上に弱いものを他に知らなかっただけで、たいした覚悟もなく無責任に思っただけだ。でも……あのとき、本当に守れてよかった」

あのときの匡さんの顔を私はよく覚えていない。
けれど、私を抱き上げた腕には相当力が込められていたような気がする。

「些細な変化だけで、確証もないのに、叔父さんの家まで来てくれたんですね」

それは匡さんにしたら珍しい。
いつもしっかりとした証拠を掴み手順を踏んで動く人だから。

匡さんは椅子に深く座り足を組みながら答えた。

「なにもなかった場合はどうとでも言い訳はきくと思った。顔が見たくなったでもなんでも。美織の言う通り、俺自身なんの確証もない状態だった。だから……頭から血を流したおまえが裸足で飛び出してきたときは驚いたし、堪らない気持ちになった」

そこで一度切った匡さんが、眉を寄せる。


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