たとえ、この恋が罪だとしても
第5章 強引すぎる依頼
〈side Ayano〉

 なんでわたしなんかに……

 怪しいもんじゃないから、とその人は何度も口にした。
 でも、どう見ても怪しい。

 紫がかった長めの髪、豹柄のフェイクファーのコートに黒の皮パンツ。べっ甲縁のサングラス。
 この辺りでは見かけないド派手な服装。

 その人はコンサートの片づけが終わるまで、ずっと教会の外で待っていたらしい。

 わたしが戸口から外に一歩踏みだしたとたん
「ちょっと、ちょっと、ねえ、そこの君」と言いながらよってきた。

 そして興奮した口調で言った。

「おれのモデルになってくれない?」

「……えっ?」

 あまりに唐突な申し出に、唖然として立ち尽くしていると
「ちょっと、なんですか、あなた!」とリーダーの美紀さんが駆けつけてくれた。
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