寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
七十四
 ナサと北区を門に向けて歩いていた。壊れた北門はいま、ワカさんと数人の獣人の人が直している。

「リーヤ、もうすぐ特急なんでも配達レンの店に着くよ」

「特急なんでも配達?」

 北区に来て数ヶ月以上は経つけど初めて聞く店の名前だ、ナサの説明では手紙、荷物なとを特急で配達してくれるらしい。運営はチーターのレンがやっていて、足の速いネコ科の獣人が数名いるのだとか。

「安く配達してくれるから家族に荷物、手紙を送るときによく使ってるんだ。でも、配達区域がガレーン国内だけなんだ」

 この前、お袋がとか、兄貴が、弟が、妹がと家族思いのナサ。四人兄弟の上から二番目らしい。いろいろとナサのことを知れて嬉しくて顔がゆるむ。

 その表情を見てか、

「リーヤはオレの家族のこと嬉しそうに聞いてくれるよな。話していて楽しい々

「あたりまえだよ、ナサの家族だもの。結婚したら家族の一員になるのだからいろいろ知りたいし、早くお会いしたいわ」

「来年になったら行こうな」
「はい」

 配達家に着き店の外にある受け付けで、宛先を書き、ナサは手紙を家族宛に送った。

「お預かりいたしました手紙は。明日の早朝にはユーシリン国に着きます」

「そうか、頼んだ」

 そのナサの声が店中に聞こえたのか、一人の黒みを帯びた茶色の髪と琥珀色の瞳の、獣人が店の外にとびでてきた。

「よっ、ナサ。家族に手紙か?」
「そうだ、レン。手紙を頼んだ」

「まかせろ! しっかり、おいらが届けてやるよ」

 仲良く話す二人のそばでいきなり挨拶すると、彼に驚かれるかもと悩んでいた。そんなソワソワしたわたしに気づいたらしく。

「人? ナサ、お前は人と仲良くしてんのか?」

 わたしを見て眉をひそめた。ーーそうだ、北区の獣人達の中には人を嫌う者もいると、ミリアさんから聞いている。いままでミリア亭の近くのミカさんの雑貨屋か、髭ジーの鋳造屋、近くの店にしか行ったことがない。

「レン、彼女はミリア亭で働くリーヤだ。そして……オレの婚約者で嫁になる!」

「ミリア亭? ええ、おいら達の中で一番人嫌いのナサがぁ、人と婚約者したのか?」

 その獣人の驚きようは半端じゃなかった。
 目はまん丸で、丸い耳と尻尾がピィーンとたったのだ。

「お前も知っているだろ、ワーウルフと戦った女性の話」

「ああ、騎士団と共においら達の北区を守ってくれたんだよな。あのまま北区に来ていたら被害が出たと聞く……まさか、この人が戦った女性なのか!」

 ナサはコクリと頷く。
 彼はまた瞳を大きくした。

「嘘だろ。こんなに華奢で、可愛くて、美人だぞ」

 それにまた頷くナサ。

「そのまさかなんだよ、昨夜のモンスターの北門襲撃にも参加して、仲間のリヤとカヤを助けた」

「はーっ!! あのチビ竜達をかスゲェ。ミリアさん、ワカさん、リキの嫁さん達以外にも人の中にいい人がいたるんだな。リーヤちゃんだっけ、チビ達を助けてくれてありがとうな!」
 
 深く頭を下げるレン。

「いいえ、みんながいたから助けられたんです」

「うわぁ、リーヤちゃん、こ、声まで可愛い。……クソッ、だんだんとナサが羨ましくなってきた。こんな可愛い子と知り合えるなんてさぁ!」

 グイッと近付こうとしたレンから、ナサはわたしを背中に隠して。

「レン、リーヤはオレの嫁だ。まあ、見るなとまでは言わないが、触るな!」

 婚約者から嫁になっていた。
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