寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
九十三
 流石の独身三人も!この事態に気が付き、竜を優しく下ろした。

「マジか! 俺は竜達に酷いことをしちまったのか」
「気付かなかった、俺も同じだ……」
「コレは、私としたことが気付きませんでした」

 反省をし始める三人に、ナサは。

「シッシシ、みんなで緊張していたんだから仕方ねぇよ。親父、ここに片割れを呼んで説明しようぜ!」

『その方がいいな。竜よ、旦那をここに呼べ』

 竜が中央区で暴れて、怪我人が出る前に、呼ぶことにコチラにした。

「はい、呼びます」

 息を吸い、番を呼んだ。


 ギャオォォォォン、ギャオ、ギャオ!!
 ギャオォォォォン

 キャオン


 ロカが通訳してくれる。

「ジン、こっちに来て北門の外で待ってる……だそうです」

「すぐ、そっちに行く」
「……待ってる」

 竜の夫妻、旦那はジン、嫁はシャン。

『よし、竜の呼びかけに成功したような、片割れが北門に来るな』

 ナサのお父様は薄暗くなってきた空を仰いだ。



 時刻は七時で外は暗くなり。
 ミカとロカは光の魔法を使い北門の外を照らし、北門にある篝火にも火を灯した。

 みんなは今かと、片割れの到着を待っている。

「ここにジンが来たわ、私はここよ!」

 竜は嬉しそうに夜空を見上げて笑った。
 いなくなってから探してようやく会えた番、彼女の瞳からはポタポタ涙が流れる。

 その前に短な黒髪と切長な赤い瞳で長身、汚れたシャツとスラックス。手枷と足枷とちぎれた鎖が着いている。

「シャン、そいつらは誰だ! ……余がいないからと、よそのものと仲良くしていたのか?」

「違うの、私、ズッと貴方を探していたの……探して、悪いこともしたし、私、……私、置いていかれて寂しかった」

 ポタポタ涙を流して、寂しかったと伝える。
 竜は驚いたような表情と、眉をひそめて、

「すまない、まだ幼い竜のシャンを守りたかった。しばらくすればなにもなくなり、また会えると思っていた……余の説明不足だ、探してくれてありがとう」


 彼女に向けて手を広げた、その腕の中に飛び込む。
 長年会えなかった二人はしっかりと抱き合う。

 それをみたお父様は両手を空にあげて、

『ウオォォォーー! めでたいな!』

「シッシシ、めでたい!」
「ええ、おめでたいわ」

 みんな竜夫妻に拍手っと、喜びの言葉をかけた。
 終わったのをみて隠れていた、ユーシリンの人々が現れて、お父様にお母様が近付き。

「あんた、国から野営のために酒と材料持ってきたんだけど、いまから何か作るかい?」

『おお、それはいいな。こんな、めでたい日には美味い酒を飲んで、美味いもんを食べよう!!』

 お父様の声にみんなは声を上げ、火を起こして、料理を作り始めた。
 

 しばらくして料理ができて宴が始まる。
 そこにお兄様とランドル様が戻ってきて報告する、今夜の舞踏会は中止となった。

 明日の夜におこなえたら、各貴族に連絡すると言っていたそうだ。
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