甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 と、同時に凶暴なほどの欲望がふつふつと湧き上がってきた。 
 彼女から、その男の痕跡をひとつ残らず消し去りたかった。

 だが手を伸ばしかけて、思いとどまった。
 こんな剥き出しの欲望をぶつけたら、彼女をさらに傷つけてしまう、と。

 そっとベッドを抜け出し、隣の部屋のソファーに横になり、眠れない夜を過ごし、早朝、奈月が目を覚ます前にホテルを後にした。

 まだ人けのない街をタクシーの窓から眺めながら、俺は思っていた。
 やっぱり彼女じゃなきゃだめだ。
 いつか心が通いあう日まで、彼女を絶対に諦めない、と。

 でも、どうすれば……
 まずは栗原の言う通り、気持ちを伝えることから始めないと。
 今日、総務を訪ねたとき、ある仕掛けはしておいたけど、明日になって彼女が連絡してくれるかどうか……

 今夜も眠れない夜になりそうだ。
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