甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





昨日ほどではないが忙しい。昨夜と同じように全テーブルを周り、2順目のお客様にも全員に挨拶して回る。

疲れた…事務所で水を飲もうとするとデスクに放置していたスマホが振動してビクッとし、ボトルから少し水が溢れた。水で良かったと、紙タオルでスラックスを拭く間も振動を続けるスマホを見ると‘真麻’だ。時間は真夜中直前…俺のクリスマスは寝起きから真麻、日付の変わる瞬間も真麻かよ。

「はい、まだ店なんだけど?」
‘でも電話に出られるくらいならいいでしょ?’
「…何?」
‘味噌汁って何?夢唯さんに散々作っているから作れるけど?’

そうか…そうだったな。俺も夢唯のところで真麻の作った味噌汁は飲んだな…忘れてた。

「部屋に帰ったときに灯りが点いていて味噌汁がある…これが流が結婚相手に求める条件」
‘わお、いきなり結婚してくれるの?’
「さあ?条件に合う人がいれば紹介すると伝えたが?」
‘お兄ちゃん、もちろん私でしょうね?’
「この仕事は続けると思うぞ」
‘何か問題ある?’
「…年末年始の忙しいのが終わったら紹介してやるよ」
‘ありがとう、お兄ちゃんラブ。おやすみ’

ブチッ…俺は店だって言ってるだろ?おやすみでなく、頑張ってと言えないのか?こんな妹を紹介してもいいのだろうか…

こうして俺のクリスマスイブとクリスマスは俺の城にて終了した。
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