パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
19.3割から5割増しらしい
 二人の身体がピッタリと重なり合っている証拠に、紬希の太腿に貴堂の腰骨がごつっと当たっているのを感じる。
「息を吐いて……」

 思わず止めてしまっていた呼吸をそっと紬希は続ける。
「……っはぁ……」
 それが思ったよりも艶めいていて、自分でも驚いてしまった。

「可愛くて、色っぽくて、綺麗だ」
 そう言って貴堂は紬希の頬を撫でた。貴堂だって、今まで紬希が見たことないような顔をしている。

 いつも紬希を愛おしげに見てくれるのだけれど、今はそれに滴るような男性らしい色香が加わっていて、くらくらするのだ。
 酔わされているかのようだ。

「紬希……」
 その綺麗な形の唇から名前を呼ばれて、思わず身体に力が入ってしまったようだ、きゅうっと眉根を寄せたような貴堂の姿は今まで見たことがない。

「動く……よ?」
 少しだけかすれたようなそのセクシーな声に紬希は頷くことしかできなかった。

 貴堂が緩く動くと紬希の下肢からは隠微な水音が聞こえる。静かな寝室にシーツの擦れ合う音と、粘膜が擦れ合う音が響いて、それに時折紬希の呼吸の音と貴堂の呼吸の音が混じる。
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