夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

 最後の夜を悠の部屋で過ごした私は、翌朝チェックアウトするためだけにホテルに戻り、悠と一緒に空港に向かった。

 セキュリティーチェックの列の手前で見つめ合う。

 これが最後の挨拶だ。彼の顔をしっかり目に焼きつけておこう。

「茉莉、俺のことを覚えていて」
「うん、一生忘れない。夢のような時間をありがとう」

「夢じゃ終わらせないよ」
「えっ?」

「俺は茉莉を愛してる。それだけは信じて」
「ありがとう。私も悠を……あっ!」

 いきなり腰から抱き寄せられて、ぶつけるようにキスされた。

 ――こんなところで!

 慌てて胸を押すものの、彼は力を緩めない。

 口内をさんざん蹂躙したあとで、ようやく私は解放された。

「さあ、もう行って。気をつけて」

 ふわりと微笑む彼に見送られ、私は愛する人に手を振った。

 悠、素敵な思い出をありがとう。
 
 そして、さようなら……
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