たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
︎✴︎


「婚姻届だ。
すぐ出そう。
今から帰りに取りに行く。

必要なものは?

君の家に寄って、印鑑と身分証と。
そうだ!
戸籍を取りに行って、証人の欄は君の場合お姉さんか! 」


✴︎


秀斗のおよそ弁護士らしくない慌てっぷりに、ゆきは驚いて、車の助手席で目を丸くした。

秀斗は一度病院の駐車場から車を出して慌てていたのを、もう一度すぐ近くの第二パーキングにとめなおして、ふぅ、とため息をついて、ハンドルに額をつけてから顔を上げ、髪をかき上げた。

手を伸ばして、目を丸くしていたゆきの頭に触れて、キスした。
そして「あぁ、」とうめいた。


「結婚式も、家も、子供も、全て君がいないと始まらない」


それから息を吐いて、


「だから、とにかく俺とまず結婚するんだ」


とゆっくり自分に言い聞かすように言って、さらにキスを続けた。

なぜこんなにも彼は慌てているのか。
なぜ今すぐなのか。
もうすでに愛になってしまっている、たぶん生涯に一度の恋だから。

何もないゆき、秀斗に本当なら出会うこともなかった。

でも出会った。

そして

落ちてしまう。
何も関係なく。
1人の人間のゆりにやはり1人の人間の秀斗が恋に落ちただけ、何も特別な事ではない。

他の女性じゃない、ゆり以外じゃない。
落ちる時には落ちて、もう2度と抜け出せない、それが恋だからなのだろう。


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