たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
︎✴︎


「姉が妊娠したって」


秀斗に本当の自分の名前を初めて呼ばれたら、何だかポロポロ涙が出てきてとまらなくなった。


「困ってたんです〜 」


と言ったら「よしよし」と頭を撫でられる。


「だって、赤ちゃんがいて、姉の記憶がおかしくなって面倒を見るしかないし、かわいいし、ぐすん」

「ああ、かわいいよな、賢次は」

「ですよね! でも就職したばかりの会社も新生児がいたら行けなくて、私、無職になったんですよ! 家賃も払えない、貯金もない、でも赤ちゃんを育てなきゃいけない、姉の出産費、入院費、検査費、治療費、だのに大学の奨学金の返済2人分、ぜーんぶ一度にふりかかって、もうどうにもならないわ〜、って」

「かわいそうにな」

「姉の入院の保証人、私だったんです。超超疎遠な父は、オレは知らないって言うから」

「お父さん? 」

「ええ。とっくに再婚してますから会ってもいません。悪いことはしないけど、無責任なんです! 」

「⋯⋯  」

「姉の話をしても、オレは関係ないよって!!!」

「⋯⋯ 」

「だから他に誰もいない、産まれた子だけは、私が何とかしてあげないといけないから」

「そりゃそうだな」

「顔だけは姉と似てるから、もういっそ姉ですって押しかければ、賢斗さんも知らないなんて言えないと思って⋯⋯ 」

「結果、出会えた」


秀斗のあたたかい胸に引き寄せられた。


「君に出会えたんだ」


とぎゅうと抱きしめられた。


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