眠りにつくまで
出会う





11月になった。今日と明日の夜を越えれば3日だ。

大学4年間付き合っただけ…一緒に暮らしてもいない。彼がいなくなってからの日々の方が長くなったけれども、私は牧瀬樹が今でも好きだ。

この季節は普段から黒い服しか着ない私を目立たなくしてくれるから好き。そして、このところの慢性的な寝不足顔にコンシーラーを重ねてしっかりメイクをしても、秋冬のマットなメイクだと思われる程度で暑苦しくないからいい。

今月3日は祝日で急ぐことはないけれど、樹のご家族が来られる前に帰りたいから早朝に行こうかな…

‘まだ来てるの?’
‘もう来なくていいって何度も言ってるのに’
‘4年付き合っただけの人、一緒に暮らしていたわけでもないのに…もうお兄ちゃんも忘れてるわよ、きっと’

華さんの言う通りかもしれない。もう樹は私を忘れているかもしれない。私は、華さんたち家族のように樹と時間を共にしたわけではないからね。

それでも私は彼に会いたい。
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