貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 エスタレイクの中でももっと山に近い村のそばには、端が見えないほど広い湖がある。

 そこでしか獲れない手のひら大の魚をケタと呼んだ。

 磨いた刃のように美しい銀色を切り分けると、身は薄紅色でやや黄身がかっている。

 海の魚に比べて脂が濃厚で、ほろほろと口の中でとろけるのだ。

 香草とともに皮がぱりっと香ばしくなるまで焼いたそれと、粒の細かい橙色の卵はナディアのお気に入りだ。

「途中で腐らない?」

「急ぎで送らせればいい。……ああ、あと氷酒なんかいいんじゃないか」

 ナディアが初めてアウグストの料理を食べた時に出会った琥珀色の酒である。

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