クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
5月度議事録

◇近海逢和と細流寧々



「先生、バカなんですか?」



静まりかえる教室。

一番後ろの席から投げられたその言葉に、みんなが息を止めた。



「…今なんつった?近海(チカミ)。」



先生がヒクッと口角を痙攣させるときは、『これから雷を落とします』というサイン。

みんなが体を硬直させる中、それをものともしない近海君が力の抜けた声を先生に浴びせる。


「いつもいつも、真面目に授業を受けてる生徒に『バカ』とか『アホ』とか…
傷つける言葉を使わないとまともに授業できないんですか?
バカなんですか?」


本日二回目の『バカなんですか?』を繰り出す近海君に、私は怖くなって口を手で覆った。

さっき先生にひどい暴言を吐かれて泣きそうにしていた私の隣の木村君は、
信じられないことを言う近海君に開いた口が塞がらないみたいだ。

ギリギリ歯ぎしりをした先生が、机にバァン!!と教科書を叩きつけて、私はビクッと肩を震わせる。

大きな音に誰もが身をすくめる教室で、近海君だけが先生をまっすぐ見据えて動じない。

「いい加減にしろ近海!!先生に向かってバカなんて言いやがって!!ふざけんのも大概に…っ、」

その時、近海君がおもむろに取り出したスマホを見て、まだ何か怒鳴り散らそうとしていた先生が固まった。
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