政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 好きなものを見ていていいと言われたけど、どれも華やかすぎて私には似合わない。涼成さん早く来てくれないかな。

 所在ないので店内をうろうろしていると、何百万もする指輪がショーケースの中に飾られていて「うわぁ……」と自分にしか聞こえない声で呟き唖然とする。

「恵茉、お待たせ」

 そこへ涼成さんがやってきてほっと息をついた。

「なにかいいのあった?」

 そう言ってショーケースに目を走らせたので苦笑する。

「アクセサリーはあまり身につけないの」

「そうか。これから恵茉にプレゼントする時は、アクセサリー以外の物にするよ」

 私の手を掴んでドアに向かった彼に連れられて外に出る。

 てっきりここで指輪をはめると思っていたけれど、挙式までつけないつもりなのかな?

 指輪の入った紙袋を後部座席に置いて、涼成さんは車を発進させた。

「このあとの予定だけど、俺に任せてもらってもいい?」

「うん」

 もうすぐ十七時を回るところだし、どこかのレストランに行くのだろうか。

 一日晴れてよかったなぁと窓外の景色を眺めながらぼんやりしていると、車は何故か横浜港で停車した。
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