政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「えっ、船に乗るの?」

「そう」

 潮風で髪をなびかせながら爽やかに微笑む涼成さんに、今日だけで何度目になるかわからない胸のときめきを感じる。

「恵茉はクルーズ船に乗ったことは?」

「ないよ、初めて」

 右も左もわからない私をエスコートしながらタラップを渡る涼成さんは慣れた様子だ。

 船内に入ってメインロビーへ向かうと、女性スタッフのひとりがうやうやしく頭を下げる。

 私はずっとおろおろしたままで、明らかにジュエリーショップの時より浮いていた。

 案内されたのは最上階にある貴賓室。貴族が食事をするような白いテーブルクロスがかかった長いテーブルの上には、真鍮スタンドに立つキャンドルが二本、優しげな炎を揺らしながら鎮座している。

 キャンドルの間には鮮やかで美しい花が飾られ、豪華な部屋の癒しになっていた。

 照明はほどよく落とされており、窓からは横浜の夜景が望める。

「すごい、綺麗……」

 涼成さんに椅子を引いてもらって腰掛ける。
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