本当は
 私は男運が悪いというか、何と言うか、ろくな男に会って来なかった。
 恋愛遍歴などと、偉そうなことを言っても、29歳で結婚するまで深く付き合った男性は、3人ほどしかいない。
 しかも、全員と身体の相性悪し。
 気持ちいいふりしかできないくらい、その行為に陶然としたことはない。
 不感症なのかもしれない。と思っていた。

 初めの男は、ガツガツして、それが嫌で3回目の行為のあと、別れを告げた。
 次からは、同じような感じで、、、最後は、もうどいつもこいつも一緒だと思うようになって、恋愛はやめた。

 央さんは、、、
 きっと経験豊富なのだろう。
 こんな不感症かもしれないと思った私を、陶然とさせてくれた。
 驚いた。
 こんなに自分の感情が昂って、それをどこまでも追いかけて行くと、弾き飛ばされるような歓喜が立ち上るとは、、、

 女性の身体に、手慣れているような央さん。
 私で満足しているのだろうか。
 日頃から、寡黙な彼の様子からは窺い知れなかった。

 そんな中での妊娠。
 お互いに避妊をやめて自然に任せようと言った矢先のことだった。
 妊娠がわかった時、私も私の周りの人たちも大喜びだった。
 央さんは、、、
わかりづらいながらも、喜んでくれていた。

 なのに、哀しきは宮勤め、、、彼の転勤。
 私は仕事を辞めて、一緒に行ってもよかったのに。
 
 『好きな仕事だろう?それに初めての妊娠だから、家の人の側で安心して暮らすのが一番だろう。』

 央さん、私は央さんと夫婦で家族じゃないの?
 あなたの側にいたいのだけど、、、

 と口にする勇気がなかった。
< 4 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop