婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

ユリウスとマリーエの話

 マリーエのことは、よく顔を合わせるようになる前から知っていた。
 去年、弟のサルジュが学園に入学したときに、彼女も同じクラスにいたのだ。
 マリーエ・エドーリ伯爵令嬢。
 エドーリ伯爵家の領地には鉱山があり、貴重な鉱石が採掘できる。そのためかなりの資産家ではあったが、エドーリ伯爵自身は野心もなく、穏やかな人物のようだ。妻を早く亡くしてしまったあとにも再婚せず、三人の子どもを大切にしていた。
 だがあまりにも可愛がっているせいか、娘のマリーエと次男にはまだ婚約者がいないらしい。
 さすがに後継ぎである長男にはいるようだが、エドーリ伯爵家と縁戚になりたい者など山ほどいるだろう。それなのに学園に在学しているうちに本人が相手を決めればいい。そんな呑気なことを言っているらしい。
 そんな伯爵の娘であるマリーエも、おっとりとした女性なのかもしれない。
 噂を聞いたときはそう思っていたが、どうやら頼りない父と兄弟を支えるしっかりとした令嬢のようだ。
 それを知るきっかけになったできごとがあった。
 サルジュが入学してから、用もないのにAクラスを訪れる生徒が増えていたのだ。それを教師に訴えて改善してもらったのが、どうやら彼女らしい。
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