あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
花火が咲いた夜、君と見た景色~慶都side~
淀みの無い、空気の澄んだ夕刻。


昼過ぎまでは少し暑かったが、今は気温も下がって過ごしやすい。


「すみません、お待たせして」


「あっ、いや」


待ち合わせ場所にやってきた彩葉はとても美しかった。


艶やかで、女性らしいその姿に心をグッと掴まれる。


「来てくれてありがとう」


「こちらこそ……お誘いありがとうございます」


「素敵な浴衣だ。悪かったな、浴衣姿を見たいなんて言って」


薄い緑地に、青と黒の小さめの朝顔がいくつも描かれたレトロ感溢れる浴衣。


深い緑の平帯や小物も上手く使い、全体的に上品なイメージで、彩葉の可愛らしさを更に際立たせていた。


アップにした髪型、その首すじからはしっとりとした大人の艶っぽさが感じられる。


見入っては失礼だと思いながらも、あまりにも魅力的なこの人に、どうしようもなく惹き付けられる自分がいた。
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