離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
9 旦那様の甘い苦悩 忍side
◆旦那様の甘い苦悩 忍side




 琴子の点滴が終わるまで、横になった彼女と手をつなぎいろいろなことを話した。


 はじめて会ったデートのときから、俺は琴子が政略結婚の相手だとわかっていたこと。

 弱みを握ってやろうと思っていたのに、どんどん惹かれてしまったこと。

 そして彼女が好きだから、必死に距離を置いていたこと。


 彼女は結婚する前に、一度でいいからデートをしてみたいと冒険するつもりであの場にいたこと。

 結婚相手が俺だと知って、本当はとてもよろこんでいたこと。
 
 きちんと話をすれば、なんの問題もなく幸せな夫婦になれたのに、不器用な俺のせいでこんなに遠回りをしてしまった。
 
「すまなかった」と謝ると、「今こうしてわかり合えたから、いいんです」と笑ってくれた。
 
 ふたりでタクシーに乗り、自宅のマンションに帰る。
 
 琴子がシャワーを浴びるのを待って、ふたりでパジャマに着替え、歯を磨いてベッドに入った。
 
 夫婦ならあたり前のことなのに、それを琴子としているなんて、なんだか現実味がない。
 
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