エレベーターから始まる恋
2nd floor
翌週明け。全会社員の大嫌いな月曜日という魔物がやってきた。
見かけるサラリーマンの顔色は心なしか青ざめているような気がする。

私も相変わらず会社への足取りは鉛のように重たい。
それに加えて、月に1回くる女性特有のアレが始まってしまった。
症状は月によって波があるが、今回はお腹の痛みも頭痛もダルさもあり、トリプルパンチだ。
少し前屈みになると痛みが和らぐため、おばあちゃんのような姿勢でゆっくり歩いている。

「はぁ、月曜から最悪だ…」

こんな姿石岡さんに見られたら、"ちんたら歩くな!"って怒鳴られるんだろうなぁ。
まったく!一度経験してみろってんだ!!

こればかりはまだ何も言っていない石岡さん。
そんな石岡さんに対して勝手に怒る私。
無意識にイライラしてしまっているようだ。

いけないいけない…

今日はエレベーターに駆け込むのはやめよう。
と言うより、走れない。

ビルに入り、遠目で何度もエレベーターの扉が閉まるのを見る。
何だか視界もぼやけているなぁ。
今月はかなり重いぞ…

ゆっくり歩みを進め、ちょうどいいタイミングで開いた扉。
先に並んでいた人物に続き私も足を踏み入れた。
エレベーターに入ってしまえはこっちのものだ。
ここに来るまでがとてつもない道のりだった。

肩の力が抜けて側面に寄りかかる。
うちの会社に"生理休暇"なんてものはない。
あってもきっと使わせてなんかもらえないのだろう。

「…大丈夫ですか?」

「…え?」

低くて色っぽい声がエレベーター内に優しく響いた。
顔を上げてその声の主を認識した途端、屈めていた腰がピンとまっすぐ張る。

「顔色悪いけど、大丈夫ですか?」

「は、はい…なんとか」
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