結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~

パンケーキ

「あぁ、私としたことが申し訳ない。ここはパンケーキが美味しいと聞いたことがあるから、それを頼もう」

 アルベルトはお腹が鳴ったことには触れずに、給仕係を呼ぶとメニューを見ていろいろとオーダーをする。ソフィアは穴があったら入りたいと思い俯いていると、アルベルトは気にすることもなく紅茶を飲んでいる。

 恥ずかしい思いをしたけれど、二人の間にあった緊張感が薄れていく。ソフィアはそっと軽く息を吐いて——、アルベルトを見つめ直した。





すぐに届けられたパンケーキは、生地も厚くふわふわしていて上には白いクリームがたっぷりのっている。添えられている蜂蜜も香りが良く、フルーツもたっぷり添えられていた。

(こんな美味しそうなパンケーキ、久しぶりだわ! あぁ、ほんの少しでもリヒトに食べさせてあげたい!)

 いつも朝食にパンをだしているけれど、子どもでは嚙み切れないほど硬いパンだ。ミルクがあればそれに浸して出してあげると、リヒトはいつも喜んで口にしている。

 こんなふわふわしたパンケーキをあの子は知らない。確かにお腹は空いているけれど、やはり優先したいのは可愛い我が子のことだった。

 それでも、今この目の前のパンケーキを持ち帰ることはできない。ソフィアはフォークとナイフを手にとると、綺麗な仕草で小さく切り分けその上にクリームを乗せる。

「いただきます」

< 106 / 231 >

この作品をシェア

pagetop