やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
10
幸いにもステファノは、執務室にいた。用があるとビアンカが告げると、侍従は通してくれた。
「どうかいたしたか?」
ステファノはビアンカを見ると、無邪気に微笑んだ。戦場では雄々しい軍人である彼だが、笑った顔は少年のようだ。一瞬見惚れたものの、ここは冷静を保つべき場面だ。ビアンカは、落ち着き払って尋ねた。
「殿下。宮廷舞踏会に出席せよと、本気で仰っているのですか。招待状をお送りくださっていたとは、まったく知りませんでした」
「さよう。直前までそなたには黙っているよう、カブリーニ子爵には口止めしておったのだ。騎士団寮へ迎えに行くつもりであったが、とんだハプニングで、そなたが王都へ来た。ちょうど良かったな」
ステファノはけろりとしているが、ビアンカはムッとした。
「良くありません! 一週間も、ここでダラダラ過ごすわけにはいかないんです。私には、料理番としての職責を果たす義務がございます」
「寮へは、代役を派遣しておる。理不尽な濡れ衣で、地下牢へ入れられるはめになったのだ。詫びとして、一週間の休暇と舞踏会参加の機会を与えるということで、兄上も納得しておられる。楽しめばよい話ではないか」
一瞬言いくるめられかけて、ビアンカはハッとした。これを言いに来たのではないか。
「しかし殿下、あのドレスはどういうおつもりですか」
「気に入らなかったか?」
「それ以前の問題です!」
ビアンカは、目をつり上げた。
「まるっきり、殿下のカラーではありませんか。あれを身に着けて出席すれば、またどんな陰口を叩かれるやら……」
「案ずるな。私からのプレゼントだと、周知すればいい話だ。私が贈ったのであれば、問題はなかろう」
確かに、前回はビアンカが勝手に着て来たから、ひんしゅくを買ったのだ。ステファノの取り計らいだと知れば、皆何も言えないだろうが……。
「まだ何か不安事があるか?」
ステファノが、顔をのぞき込む。確かに一見、問題は残されていない、とビアンカは思った。家族は承知しており、騎士団寮には代役が派遣された。ウィッグもドレスもそろっている。だが……。
「殿下。大問題がございます。私、踊れないのです」
「どうかいたしたか?」
ステファノはビアンカを見ると、無邪気に微笑んだ。戦場では雄々しい軍人である彼だが、笑った顔は少年のようだ。一瞬見惚れたものの、ここは冷静を保つべき場面だ。ビアンカは、落ち着き払って尋ねた。
「殿下。宮廷舞踏会に出席せよと、本気で仰っているのですか。招待状をお送りくださっていたとは、まったく知りませんでした」
「さよう。直前までそなたには黙っているよう、カブリーニ子爵には口止めしておったのだ。騎士団寮へ迎えに行くつもりであったが、とんだハプニングで、そなたが王都へ来た。ちょうど良かったな」
ステファノはけろりとしているが、ビアンカはムッとした。
「良くありません! 一週間も、ここでダラダラ過ごすわけにはいかないんです。私には、料理番としての職責を果たす義務がございます」
「寮へは、代役を派遣しておる。理不尽な濡れ衣で、地下牢へ入れられるはめになったのだ。詫びとして、一週間の休暇と舞踏会参加の機会を与えるということで、兄上も納得しておられる。楽しめばよい話ではないか」
一瞬言いくるめられかけて、ビアンカはハッとした。これを言いに来たのではないか。
「しかし殿下、あのドレスはどういうおつもりですか」
「気に入らなかったか?」
「それ以前の問題です!」
ビアンカは、目をつり上げた。
「まるっきり、殿下のカラーではありませんか。あれを身に着けて出席すれば、またどんな陰口を叩かれるやら……」
「案ずるな。私からのプレゼントだと、周知すればいい話だ。私が贈ったのであれば、問題はなかろう」
確かに、前回はビアンカが勝手に着て来たから、ひんしゅくを買ったのだ。ステファノの取り計らいだと知れば、皆何も言えないだろうが……。
「まだ何か不安事があるか?」
ステファノが、顔をのぞき込む。確かに一見、問題は残されていない、とビアンカは思った。家族は承知しており、騎士団寮には代役が派遣された。ウィッグもドレスもそろっている。だが……。
「殿下。大問題がございます。私、踊れないのです」