年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
3.
「おはようございます」

 11月も早くも1週間以上が過ぎ、すっかり寒くなってきた日の午後。
 今日は希海さんと、別のモデルさんとの撮影だ。最近は希海さんも香緒ちゃん以外の人を撮る事が増えた。そして、そこに私も時々入らせて貰っている。
 ちなみに、香緒ちゃんは今新婚旅行代わりに北海道旅行に行っているのだ。

「あぁ。今日は頼む」

 一旦モデルさんのメイクを終わらせてスタジオに入ると、先に入っていた希海さんを見つけて挨拶する。

 希海さんは、クールな雰囲気そのままに、黒いサラッとした髪と切長の涼しげな目元。そして、表情も見事にクール……と言うより、ほとんど喜怒哀楽を表さない。
 5年一緒に仕事をしているけど、大笑いしているところなんて、もちろん見たことはない。でも、長く付き合っていると、さすがになんとなく表情は読めるようになって来た。

「この前、睦月さんと仕事したんだって?」
「え? あぁ。そうなんです。香緒ちゃん、とっても楽しそうでしたよ」

 その時のことを思い出しながら、私は少し顔を緩めながら答えた。
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