婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
第六章 心に灯る炎

 季節は移り変わり、暑い夏が終わろうとしていた。

 フィオナとの生活は楽しくもあったけど、口コミで薬の効果が広まってくると忙しくて目が回るほどだった。皇城での調薬が落ち着いている時は、ミリアムにも手伝ってもらって需要の多い安価な丸薬を作ってもらっている。

 元魔女とはいえ魔女なのだから、商品名である『魔女の秘薬(ウィッチ・エリクサー)』に偽りはない。効果も私たちが作るものと同じだ。

 解呪の依頼も予約はすぐに埋まってしまうほど、依頼が来る。この辺は魔女への当たりが特に強いから、需要に対して供給が少なすぎるのだ。私たちはあくまでも魔女との取り継ぎ役として、お店に立っているから認識阻害の魔道具さえつけていれば問題なかった。

 心配していた治安の悪さも、薬屋に因縁をつけて売ってもらえなくなったら困ると思われたのか、背後に魔女の気配がするから敬遠されているのか、至って平和に過ごしていた。

「それではセシル師匠、お母さんのところに行ってきます。週末だからといって、あまりグータラしてはいけませんよ。お昼前にはちゃんと起きてくださいね」
「うん、わかってる。大丈夫だから、早くミリアムに顔を見せにいきなさい」

 どちらが年上だかわからない会話の後に、フィオナは笑顔で影移動で皇城にいる母親のもとへ向かった。
 フィオナは実にしっかりとした娘で、私がマックイーン家から追い出された時よりも頼り甲斐がある。独り立ちは意外と早いかもしれない、なんて考えていた。


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