婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 週末はいつもミリアムのところで過ごすため、私はひとりアパートで緊急で来店するお客様の対応をしていた。騎士団も街の巡回をしているし、そういう人たちは街の薬屋は利用しないから、そこまで忙しくはない。

 だから以前と同じように好きな時に寝て、好きな時に起きて、好きな時に好きなだけ食べたいものを食べていた。だからこそのフィオナの小言になるのだけど。

「まあ、ミリアムの教育の賜物よね」

 そうして寝巻きのままフィオナを見送った私は二度寝するのだ。
 ベッドに入り、うとうとしはじめた頃、扉を激しく叩く音が聞こえてきた。

 ——ガンガンガンッ!!  ガンガンガンッ!!

「んん……もう、誰よ……って急患!?」

 ガバッと起き上がり、寝巻きの上からロングカーディガンを羽織ってお店の扉を開いた。

 途端に鉄サビの匂いが鼻につく。ここまではっきりと血の匂いがするのであれば、深い傷を負ったに違いない。

「入って、すぐに調合するから」
「なっ、魔女かよ!」

 しまった、寝ようとしていたから認識阻害のブレスレットを外したままだった。

「文句があるなら帰って。今日は留守番を頼まれただけなの。その連れを助けたいなら黙っていうことを聞きなさい」

 太々しい態度で命令すれば、緊急事態だし魔女を忌避していても文句は言わなくなる。鎧を着た男が、背負っていた執事服の青年を店内のソファーにそっと下ろした。


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