エリート外交官は別れを選んだ私を、赤ちゃんごと溺愛で包む
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 ララはイギリスにいるときからインフルエンサーとして有名だったけれど、日本に来てさらに注目されているようだった。
 というのも、テレビに出だしたからだ。

「ああやだ、ララじゃない。クワバラクワバラ」

 どこで知ったのかそんなおまじないを唱えつつ、おばあさまがチャンネルを変える。

 私は一瞬見えたララのとびきりの笑顔を頭から消そうと窓の外を見た。
 すっかりと高い、秋の空――トンボが飛んでいく。
 終わりかけのコスモスが風に揺れる。慶梧が楽しげに広い庭をとてとてと走って行った。
 その後ろをおじいちゃんが追いかける。

 そう、「広い庭」。

 勇梧さんが買ったお隣の家との境になっていたブロック塀を撤去して、庭から直接行き来できるようにリフォームしたのだ。家屋もほとんど改装済みで、最後に壁紙を張り替えてもらっているところだった。

「完成したらあちらに住むの? カノコ」

 ちらりと窓の外を見つつ、おばあさまが言う。

「……そう、なるのだと思います」
「結婚して?」
「それは……」
 私はぐっと唇を噛む。
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