ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
8. 織江side 同居2週間のモヤモヤ

そうして、手探りの日々がスタートした。

朝部屋から出るたびにビクついたり、「今夜、家で食べるから」ってメッセージ一つで心臓が止まりそうになったり。

廊下で寝起きの彼と鉢合わせた時は、「私は家政婦、私は家政婦」と呪文を唱え、()になってやり過ごしたけど……彼は楽しそうに笑ってた気がするから、こっちの動揺なんてお見通しなんだろう。

“家政婦”、と言えば……

結局のところ、毎日の朝食と、たまの夕食(彼は不在の場合が多い)くらいしか作らせてもらっていない。
あとは……洗濯? ただ、乾燥まで全自動の洗濯機のスイッチを押してあとは畳むだけだし、全然大した仕事じゃない。だからその分しっかりとご飯は作らなきゃ、とは思う。

とはいえ、どこまで彼が満足してくれているのかは不明で……。

もともと好き嫌いはないみたいで「美味いよ」って毎回完食してはくれるものの、お世辞の可能性もあるし、あまり調子に乗らない方がいいわよね。


そんなこんなで、気づけば2週間が過ぎていた。

私たちの関係はどうなったかというと――……あまり(・・・)変化はない。

責任とれとか言われて、最初の頃は今にも押し倒されるんじゃないかと毎日ビクついてたのに。身構えていた自分が恥ずかしくなる、というか、肩透かし感すらあるほど平穏だ。

彼の希望で朝は一緒に食べるようにしていて、そのおかげで前より緊張せずに話せるようになったこともあって、本当にただの同居人、という感じ。

となると、会社にも通いやすく、ビルの中に一通りのお店が揃うタワマンの生活は何かと便利で快適だし、高層階からの眺めは最高で……そんな日々に慣れつつある今日この頃。

ただ、まるきり何もないかというと、そういうわけでもなく――


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