干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

憧れの理由

「この渓谷に来るのは初めてだったの?」

 雅也の問いに、美琴は小さく頷く。

「ここに来るの、ずっと憧れだったんです。いつも写真で見てただけなんで。だからかな。実際に見たら興奮しちゃって……。そしたらズルッと」

 美琴は足を上げて、ずっこける真似をする。


「写真で見てたって、もしかして……さっきのSNS?」

「そ、そうなんです! もしかして、ご存じなんですか……?」

 美琴は期待を込めながら、伺うように雅也を見上げた。


 ――もしかして、この人……。


「うーん……」

 雅也は口ごもる。


「ねえ。聞いてもいい? 何でここに来るのが、憧れだったの?」

 しばらくしてから、雅也が口を開いた。

「このSNSを見つけた時、私ちょうど就活中だったんですけど。自分がやりたい事とか、将来とか……そんなの全然わからなくって。でも周りは就活一直線だし。焦ってあやふやなまま採用試験だけ受けてたんです。そしたら案の定、全滅……」

 美琴は肩をすくめて笑う。
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