干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

干物の宣言

「ねえねえ! 干物ちゃん! 副社長ってどんな感じ?」

 美琴が休憩スペースでお茶を入れていると、突然後ろから女性社員に声をかけられた。


「どんなって言われても、まだよく……」

「そうなの?! 彼女いるのかとか、リサーチしといてよ!」

「そうそう! お近づきになりたいなぁ」

「干物ちゃんも今度一緒にお茶しない?」


 ぐいぐいと迫ってくる女性社員に、愛想笑いを返しながら、美琴は慌ててエレベーターホールに出る。


 ――いやいや、その前にあなた達、誰よ……。


 副社長のプロジェクトメンバーになった美琴は、一躍社内の時の人となっていた。

 あわよくば、副社長夫人の座を狙いたい人達にとっては、美琴は格好の餌食だ。


 急いでエレベーターの上りボタンを押しながら、ふと曲がり角の近くに目をやる。

 ――あれ……? 部長と専務?

 部長は専務に一礼すると、くるっと向きを変え、美琴の方に向かって歩いて来た。
< 33 / 435 >

この作品をシェア

pagetop