※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
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「すまなかったね……やはり君をあちらへ連れて行くべきではなかった」


 涙を流し続けるノナに、エーリは申し訳なさそうに顔を歪める。けれどノナはフルフルと首を横に振った。


「いいえ、エーリ様。これで良かったのです」


 咲き誇る花園の中、二人は互いをきつく抱き締めあう。エーリは恐る恐るといった様子でノナを覗き込むと、縋るような表情を浮かべた。きっと番同士なら、こんな表情をさせることなどない。互いを求めて止まない――――そういうものだからだ。
 けれど、そうと分かっていて、エーリはノナを選んだ。約束されたものが何一つないというのに、それでも感情を――――ノナへの想いを優先したのだ。


「エーリ様。わたくしはあなたの運命の(ひと)ではございません。けれどわたくしは……あなたのお側に居たい」


 ノナから伸びる運命の糸は、初めからエーリへと繋がっていたわけではない。けれど、エーリが二人を結び付けた。たとえ運命に裏付けされていなくとも、二人が強く望むならば、それは強固な絆となり、未来永劫二人を離しはしないだろう。


「側に居てくれ、ノナ。私は君のことが、好きで堪らないんだ」


 美しい瞳に熱情を滲ませて、エーリはノナをまじまじと見つめる。頬を撫で、切なげに眉を寄せたエーリは、先程ベルを求めていたエーリよりも余程、切羽詰まって見える。


「……嬉しいです。運命の(ひと)だと言われた時より、何倍も」


 誰からも選ばれないと思っていた――――そんなノナを、与えられた運命に抗ってまでエーリは選んだ。ノナはそのことが、堪らく嬉しい。
 二人はゆっくりと、愛し気に額を寄せ合う。


「ノナ――――私の妻になってくれるかい?」


 エーリの両手がノナの頬を優しく包み込む。「はい!」と力強く答えつつ、二人は満面の笑みを浮かべるのだった。


(END)
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