国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
12.二人の秘密
 胡散臭そうにノルトに睨まれたクリスは、気付かない振りをした。彼が言いたいことというのはなんとなく心当たりがある。
 次の魔獣討伐で使えるように、魔石に魔力を溜めて欲しいと言い出したのは団長であるノルトのくせに、その邪魔をしようとしているのか、じーっとクリスの方を見つめていた。
 気になって仕事にならない、わけではないけれど、恐らく彼はクリスの方から口を開くのを待っているのだろうと思う。仕方ないので、それにのってやることにする。
「何か御用でしょうか」
 魔石から目を離さずにクリスは尋ねた。
「やったのか?」
 まったく下品な上司だ、というのがクリスの率直な想いではあるのだが、それに気付かない振りをする必要もあると思っていた。
「何を、ですか?」
「だから、お前は彼女を抱いたのか? 彼女からお前の魔力を感じる。そりゃもう、ぷんぷんとだな」
「あなたがそう感じるということはそういうことなんでしょうね。まあ、他にそのことに気付くような人物もいないと思われるため、あえて口にはしませんが」
「それがいたんだよ」
 はぁ、と頭を抱えながら、ノルトは空いている椅子に適当に座った。しかも背もたれを抱きかかえる形で座る。普通に座れないのだろうか。
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