若旦那様の憂鬱

緊迫の日(柊生side)


季節は変わり夏になる。 

柊生は早朝の日課のジョギングを欠かさないが、ここ最近は日の出が早くなり朝の暑さも増してきた。

いつもの公園は大きな木々が立ち並び、
日差しを避けるのにはほど良いが、
日が昇ると蝉の大合唱が始まるため、
より暑さを倍増させる。

明日から水泳に切り替えようかと思いながら、いつものパン屋へ立ち寄る。

「おはようございます。昨日注文したパンをお願いします。」
まだ、オープン前だが幾度か通ううち顔見知りになり、早めの時間でも売って貰えるようになった。

「おはようございます。丁度、焼き上がったばかりですよ。今、ご用意致します。」
店主の女性オーナーが元気に挨拶してくれる。

「いつもお買い上げありがとうございます。」
花がお気に入りのクロワッサンとフランスパンを受け取り、代金を払う。

「うちの妻がここお店のパンが好きなんです。」
爽やかな笑顔で柊生が笑う。

「あっ…ご結婚されてるんですか…。」
若干がっかりした声で店のオーナーは答える。

「ええ、妻もたまに夕方に買いに来てるんですよ。」

このハイスペック男子の妻が羨ましいと、
オーナーは思いながら、

「そうなんですね。また是非ご夫婦でお寄り下さい。」
と挨拶をする。
< 308 / 336 >

この作品をシェア

pagetop