君がたとえあいつの秘書でも離さない

覚悟


 その日。
 結局忙しくしていて、あれ以上私のことについて話す時間はなかった。
 
 営業一課の担当として春樹から電話があった。
 取締役から言われたとおりに伝えて、電話を切った。
 
 春樹に気をつけてと言いたかった。
 メールで伝えようかと思ったけど、彼も勘がいいから私に何かあったとすぐに気づくだろう。
 
 私のために何かして彼が大変になったらそれこそ本末転倒。
 昼も食欲がなく、下のコンビニでプリンや菓子を買ってくる。
 
 空いた時間、無理矢理口に詰め込んだ。
 秘書業務は思った以上に体力を使う。
 
 そのせいで、食事をおろそかにするとハイヒールで走ったり出来なくなる。
 想像以上の肉体労働なのだ。
 
 ある程度のカロリーは取らないと倒れてしまう。
 そのうえ、神経を常にとがらせているから心労も半端ない。
 
 華やかな職種と思っている人には本当に勧めない。
 挙げ句の果てには、プライベートも縛りがあるということだ。
 
 私にしろ、皐月にしろ。相手を知られて調べられる。
 信用していないとかではない。恐らく危機管理。
 
 考えれば分かることなのだが、心が追いつかない。
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