【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第18話】

さて、その頃であった。

8月23日に父方の親戚のおじが肝不全《かんふぜん》で亡くなった。

アタシは、葬儀に出席するために三原の実家に1日だけ帰省した。

ところ変わって、本郷町《ほんごう》にある斎場《やきば》にて…

斎場《やきば》の待合室でアタシは両親と一緒に今後のことについて話し合った。

「としこ…あんたこれからどうするのよ?」

母からの問いに対して、アタシは少し戸惑いぎみの声で言うた。

「この先のこと?」
「この際だから離婚して、実家《うち》に帰ってきたら?」

母の言葉に対して、父はブツブツと言った。

「こんなことになるのだったら嫁に出さずに婿《むこ》を取るべきだった!!そうすればとしこが不幸にならずに済んだのだ!!(ブツブツ)…」

父の言葉に対して、アタシはこう言うた。

「お父さん、お母さん…アタシ…ダンナさん…いらない…」
「そうね…章介《しょうすけ》も雄一郎《ゆういちろう》も…両親がモンペア(モンスターペアレント)なのよ…なにが『一生懸命になって育児してきた…』かしらねぇ…」
「全くその通りだ…こうなれば…遠方にいる息子夫婦のうち一組に実家に帰ってくるようにお願いしよう…としこの結婚生活が破綻した以上、頼りになるのは息子夫婦だけだ。」
「そうね…それじゃあ、東京にいる(長兄)の夫婦の家族に帰って来るように頼むけどいい?」

母が言うた言葉に対して、父はなにも言わなかった。

父は、バリバリと音をたてておせんべいを食べた。

日付が変わって、8月27日の深夜0時過ぎのことであった。

ところ変わって、義姉《あね》が入院している三次市内《みよし》の救急病院にて…

集中治療室にいる義姉《あね》は、今も危険な状態におかれていた。

その時であった。

集中治療室に、恐ろしい覆面をかぶった男が侵入した。

そして、義姉《あね》の生命維持装置をオフにした。

(ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ…)

けたたましいブザーが、集中治療室に鳴り響いた。

通りかかった男性の医師がスイッチを入れ直そうとした。

その時であった。

恐ろしい覆面をかぶった男がやって来た。

男は、刃渡りのするどい刃物で背後から男性医師のくびもとを激しく刺した。

「グワーッ!!」

男性の医師は、恐ろしい覆面をかぶった男に刃渡りのするどいナイフで刺されて殺された。

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)

事件発生から三時間後のことであった。

現場の病院に、広島県警《けんけい》のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らしながら入った。

義姉《あね》は、生命維持装置を切られた直後に亡くなった。

捜査1課の刑事たちと鑑識の捜査員たちは、ピリピリした表情で現場検証をしていた。

しかし、容疑者に結び付く証拠が見つからなかった。

捜査はナンコウするようだ。

さらにその上に、新たな問題が発生した。

福山市の建設会社の宿舎から家出したあいつが、会社の金庫に大穴をあけて逃げたことが明らかになった。

建設会社の社長さんは、あいつを窃盗罪《ぬすみのようぎ》で刑事告発した。

広島県警《けんけい》は、会社側の告発状をジュリした。

これであいつは、サツに追われる立場となった。
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