ベッドの上であたためて
ここでは何度か男に誘われて一緒に出て行っている。
『最新の人』なんて言うくらいだから、柳瀬さんはそれを分かっているんだろう。
普通に飲みにきているだけなのに、私はなぜか男に声をかけられることが多く、それはこの場所に限らない。

「私、そんなに物欲しげに見えるのかな。ナンパ待ちしてるつもりなんて全然ないのに」

髪の毛は肩まであるダークブラウンのストレート。
服装だって、美月さんの店の雰囲気に合わせた落ち着いたものにしているつもりだ。
例の最新の人も『清純そう』って言っていたし、それならどうして声をかけてくるんだろう。

「物欲しげ、とはニュアンスが違うかな。心細そうな顔をしてるからだと思う」

顔を上げると、前髪から覗く黒い瞳と目が合った。

「心細そうに見えますか?」
「飲んでても気が晴れない感じがする。カウンターに若い女の子がひとりっていうだけでも男は目がいっちゃうのに、そういうの見たら余計に声かけたくなると思いますよ」
「…女は男の人がカウンターでひとりで飲んでても声かけようなんて思わないのに、おかしな話ですね」
「きっと男女で感覚違いますよね」

柳瀬さんはくすくすと肩を揺らす。
『爽やか』を具現化したような彼でも、自分が他の店で飲むときは同じことを思うんだろうか。
所詮、男は男だ。

グラスの中身を飲み干すと、喉が焼けて身体が熱くなる。
だけど、それはやっぱりすぐに冷めてしまう。
酒を飲んでも男に抱かれても、いつも同じだ。

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