好き……その言葉が聞きたいだけ。【完】
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 律との初体験を済ませ、幸せな気持ちのまま遊園地デートまですることが出来た、とても思い出深い週末を過ごした私は心が満たされたまま月曜日を迎えて学校へ行くと、

「……琴里、久しぶり」

 あの一件以降ずっと学校を休んでいた新田が久しぶりに登校して来ていて、声を掛けてきた。

(……最悪。一気に気分が盛り下がった)

 出来ることなら関わりたくないけど、同じクラスである以上そうもいかず、テンションも下がったけれど、いつまでもこのままにしていても余計に気分が悪い。

 心の中で色々と葛藤した末に、

「……久しぶり。あの時のことはもういいから、これからは、必要以上に干渉しないで。あくまでもクラスメイトとして接してよ。それと、どんなに言われても、新田に心が動くことはないから」

 あの日のことは水に流して、これからは必要以上に干渉しないで欲しいということと、どんなに言い寄られても気持ちが動くことはないということを伝えた。

「……悪かったよ。ごめん。許してくれてありがとう」

 流石に悪かったと思っているようで、新田は私の言うことをすんなりと受け入れてくれて、この件は無事に片付いた。

 これで、学校へ来ても新田のことで気を揉むことが無くなった私はホッと胸をなで下ろした。

 けど、私にはまだ、気がかりなことがある。

 それは、律と鈴さんのことだ。

 付き合っていた二人。

 今はお兄さんの奥さんだから、義理の姉になったけれど、今でも二人の間には言い表せない何かがある気がして、ずっと気になっていた。


 その日の放課後、いつも通り私が律のアパートに向かって歩いて行くと前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。

(あれって……もしかして、鈴さん?)

 そう思って別の道から行こうと元きた道を引き返そうとした、その時、

「あ、待って!」

 私に気付いたのか、鈴さんが声を掛けてきた。

 それには流石に知らないフリが出来なかった私は仕方なく彼女の方へ視線を向け、

「……何でしょうか?」

 素っ気なくそう問い掛けた。

「あの、これから少し、時間あるかしら?」
「え?」
「……あなたと、話がしたくて来たの」
「私と?」

 どうやら鈴さんは律に会いに来たのではなくて、私に会いに来たらしく、話がしたいと言われ少し戸惑った。

(一体、何なんだろ?)

 正直私はあまり関わりたくないけど、話というのは気になるし、私も聞きたいことと言いたいことがあるのは確かだったから、

「……分かりました。ここじゃあれだし、少し行った所に公園があるから、そこでいいですか?」
「ええ」

 鈴さんの申し出を受けて、私は彼女と話をすることに決めた。
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