転生公爵令嬢のイチオシ!

「ああ!こんなに泣いて!怖かったんだね」

「……」

ジャガー?

「僕がいるからもう大丈夫だよ!さぁおいで」

「……」

ジャガーが私の縛られている口元の布や手足の縄を外す。
なんでジャガーが!?

周りを見渡すとどこかの屋敷の部屋の中のようだ。
ここはダンテ家所有の屋敷なの?
箱から出されてソファーに座らせられ、ジャガーも隣に座る。

「こんなことをしてごめんね。でも君が悪いんだよ。君は僕のものなのに…」

抱きしめようと腕を広げ近づく。

「嫌っ!!」

ドンとジャガーの胸を両手で押して拒む。
久しぶりに見たジャガーはとても痩せてやつれていた。
それに目が怖い…。

「なぜ?僕は君の婚約者だろう?なぜ、全然会えなかった!」

「!!」

ガシッと腕を掴まれる。

「痛っ!ち、違うわ!婚約は破棄されたわ!!」

「そんなはずはない!君と僕は結婚するんだ!決まっていたんだ!それに君だって僕のことが好きだろう?愛し合うふたりを引き離すなんて!だからここに連れてきたんだよ」

「…何を言っているの?」

「あの日だって君を階段から落とすつもりなんてなかった!君と話をしたくて肩を掴んだだけなんだ!僕は悪くない!!」

「っ!」

手の力が強くて痛い!!

「それなのに!僕のメリアーナなのに!ストライブのヤツが君に近づいて!!許さない!!許さない!!あいつはいつも!いつも!いつも君の側にいて!!」

更にギリリと力が入る!!
怒りで興奮していて怖い!!

「痛い!離して!!」

できるだけ大きな声を出した。
するとジャガーはハッとしたように少し力を緩めた。
でもまだ腕は握られたまま。

「ごめんよ。そうだ!お茶でも飲もう。疲れただろう?」

「ほ、本当に何を言っているの?帰して!!」

「メリアーナこそ何を言っているの?ここが君の帰る家さ。君はここで私と一緒に暮らすんだよ。僕達は結婚するんだから。当たり前でしょ?」

「!?」

「ここは僕の家のお気に入りの別邸なんだ。メリアーナにここを見せてあげたいと思っていた。素敵な所なんだ!」

「…ジャガー様?」

話が通じない。
なんだか普通じゃないわ。

「ああ!メリアーナ!やっと僕を呼んでくれた!」

ジャガーは嬉しそうな顔をして掴んだままの私の腕を撫でる。
ゾッとして手を振り払った!!

「あなたとの婚約は破棄されたでしょう?もう無関係よ」

「僕は承諾していない!!ああ、そろそろ夕食の時間だね。一緒に食べよう。準備ができたら迎えに来るよ」

ジャガーが立ち上がる。
部屋の扉を開けて振り返る。

「この部屋には一通り必要なものは揃っているよ。メイドをひとり付けるからね。…逃げられないよ」

歪んだ笑みを浮かべて部屋の外に出て行った。
扉を閉めて鍵が掛けられる。
閉じ込められたけどジャガーが離れたことにホッとする。

窓を見ると鉄格子になっていて出られないようだ。
どうしよう。ここは学園からどのくらい離れているの?

最近私がひとりになると感じていた変な視線はアイツ!?
いつもレイ様と一緒にいてって怒鳴ってたわ。
私を見ていた?
私がひとりになると近づいて来ていた?

…ストーカー!?
ゾワッ!と鳥肌が立つ。
どうにかして逃げなきゃ危険だわ。
こんなことが起こるなんて!


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