見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~

仕掛けられた罠、の顛末

オープンセレモニーは終始和やかな雰囲気で、問題もなくスムーズに終えることができ、その後は報道陣や来て下さった皆さんが施設を見て回っている。

親父や俺達兄弟にインタビューしてくるテレビ局もいたけど、それも落ち着くと俺達は家族みんながいるとこに合流した。


「あっくん、ほら、パパが来たよー」
と乃愛が俺に礼翔を渡す。

きゃっきゃと俺に手を伸ばして笑う礼翔にメロメロになりながら「あっくん、パパだよぉ」と抱きあげると、どこからか「伊織くーん」と俺を呼ぶ声がした。


この声は…と嫌な感じがし、辺りを見回すと、そこにいたのはやはりユキさんだった。

まぁセレモニー後の見学は一般客も入れるから、いてもおかしくはないけれど…

あの時のイライラがぶり返しそうでモヤモヤする。


「久しぶりー!あっ、社長、副社長のみなさまもお久しぶりです。楠 ユキですー」

というやけに明るい声に、親父が答えた。
「楠さん、久しぶりだね。元気にしていたかな」

「はいっ、もう毎日元気な息子と楽しく過ごしてますっ」
と、手を繋いでいる小さな男の子の頭を撫でた。

…そっか、随分前に辞めたとは聞いてたけど、結婚して子どもを生んでたのか。
と、俺への関わりが薄くなったことにちょっと安心したんだけど…


「あっ、その子、伊織くんの子ども?」

ユキさんが礼翔を見ながら俺に聞いてきた。

「えぇ、俺の息子です」
あんま名前とか知られたくなくて、それしか言わなかった。



「じゃあ、うちの子のママ違いの兄弟になるんだねっ」

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