ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
EPISODE#9

話が済むと、サキさんのお父さんは




「この話を飲んでいただけるなら、私だって何か考えてあげますよ」




そう言って、伝票を持って先に席を立った。




さっきから変な耳鳴りがして、私はしばらく憮然としていたけど、


だんだん自分が惨めに思えて泣きたくなった。




上着とバッグを持って急いで席を立つ。




…その瞬間、


通路に出ようとしていた私の下半身にドスンと何かがぶつかった。




「あったーいっ!」




子供の叫び声と共に、スカートがびしょっと濡れる感じがあった。




視線を下に落とすと、


プラスチック製の小さなカップを持った1〜2歳くらいの女の子が、私の前で泣きじゃくっていた。


前方不注意だったのか、ドリンクコーナーから走ってきて私にぶつかったようで、


彼女のカップに入っていたと思われる液体は、全て私のスカートが吸収してしまっていた。




女の子は「じゅすじゅすー!」と言ったまま泣き続けている。



泣きたいのはこっちもなんだけどと思っていると、




「アカリ…!」




そう言いながら、若くて綺麗な女性がこちらへ駆けて来た。
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