ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
「すみません、娘がご迷惑をおかけしまして…」
「いえ、こっちこそ前をよく見ていなかったので…」
子供に無理矢理頭を下げさせようとしている母親に、とりあえず自分も頭を下げる。
彼女は私の白いスカートにできた紫色のシミを見て、提げていたバッグの中からウエットティッシュを取り出した。
「ごめんなさい…。スカート、汚しちゃいましたね…」
母親はそう言いながら私の前にしゃがみ込んで、
スカートの汚れた部分をウエットティッシュでこすったりたたいたりした。
けれどそのシミは一向に薄くならない。
するとこれは無理だとあきらめたのか、彼女は再び立ち上がって言った。
「あの、うちこのすぐ近くなんです…。よかったらうちで洗いますので寄っていかれませんか…?」
見ず知らずの人からの申し出を、
「あ…、帰ってから自分で洗うんで結構です」
私は断ろうとしたけど、
「でもぶどうジュースのシミって、ついたらすぐに洗わないと落ちませんよ」
そんなことを言われてしまい、結局その母娘の家にお邪魔させてもらうことになった。