幼なじみ〜first love〜

蒼―side―


満天の星空の下、静かに流れる川の音、虫の鳴き声…息を切らし走ってきた俺は、河原に座り込む君を見つけた。




「……絢音…っ」




呼ぶ声に、俯いていた絢音は、ゆっくりと顔を上げ、俺の目を見つめた。
俺は、隣に腰を下ろす。




まるでこの世界に


2人だけ



時が止まったみたいに



この時をずっと

待っていたはずなのに……




……どれくらいの時間が

経っただろう……




俺たちは、ただ並んで座り、無言のまま、星空を見上げていた。




何も言わなくても


言葉にしなくても


絢音の考えていることは


伝わってくる



そばにいると

こんなにも



伝わってくる



「…ねぇ…蒼…」




沈黙を破ったのは、絢音の方だった。小さな声で絢音は、星空を見上げたまま呟いた。




「“運命”は…ずっと前から…決まっていたのかな…」




“運命”


俺は

絢音と離れてから


ずっと

自分に問いかけていた



「…それは…俺にも…わかんないな……」




「蒼……ごめんね……」




絢音は、静かに涙を流した。




遊也から、絢音が全ての秘密を知ってしまったと聞いた。




「絢音が謝ることは…何もないよ…。約束を破ったのは…裏切ったのは…俺なんだから…」




「そうじゃないの。あたしが今まで見てきたモノ…全部うそだった」




「絢音…」




「パパも嘘…ママも嘘…あたしの本当の親じゃなかった……」




「違うよ…絢音…2人は絢音の父ちゃんと母ちゃんだろ…?絢音をすごく大切に思ってる…」




「パパは…蒼のお父さんだよ」
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