准教授 高野先生のこと
13.お誕生日おめでとう

朝、目が覚めると隣りはからっぽで、先生は既に起きているようだった。

もっそりとベッドを出て、ぼーっとしながら先生の姿をきょろきょろ探す。


「おはよう」

「おはようございます」

先生はパジャマ姿でコーヒーを飲みながら、床に新聞を広げて読んでいた。


この部屋は間取り的にはおそらく2DK。

“L”はなくて、少し広めの“D”がリビングのように使われている。


「コーヒー飲む?」

「はい!……あのっ」

「ん?」

「お誕生日おめでとうございます!」

誰よりも早く、一番先に言いたかった。

言えたと思った。


先生は私を見上げたままふわりと微笑んで、それから、よいしょと立ち上がった。


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