10月のはじめ。

私は並木先生の急なおつかいで母校を訪れることになった。

本来なら複写依頼をかけて簡単に済む用事なのだけど。

誰かが出向くまでもなく待ってさえいればいいだけの。

ところが――

その“待つ”余裕が1ミリもなかったのだから仕方がない。

なにしろ並木先生は締め切りを目前にモーレツに急いでいて。

可及的速やかな対応が不可欠の状況だったのである。

ちなみに――

並木先生は締め切りギリギリにならないと火が付かない人。

典型的なイササカ先生タイプ。

さすがの先生も私に頼みつつ今回ばかりはひどく恐縮していた。

「僕の不徳の致すところで……」

「いえ、ぜんぜんです。私が適任だと思いますし」

私は迷うことなく二つ返事でOKした。


ひょっとしたら高野先生に会えるかもしれない。

もちろん、そう思ったから。