准教授 高野先生のこと

ついこの前だって――

“好みの異性のタイプは?”なんていう話題になったとき。

どういう流れでそうなったのかは忘れてしまったけれど。


もちろん私はガツンと一発聞いた。

「高野先生の好みのタイプってどんな感じの女性ですか?」

最大の関心事を自然に聞ける絶好の機会を逃すまい、と


誤魔化されぬよう、あらかじめ釘をさす。

「好きになった人がタイプって答えは禁止です」

さらに――

「ご想像におまかせしますって答えも禁止です」

抜かりなく念を押すように今一度。


先生は、少しだけ“ふーむ”と考えて――

「そうですねぇ……」

それから、まっすぐに私を見て穏やかに言った。


「詩織さんはタイプですよ」


瞬間、私は息がとまるかと思うほどおどろいて――

次に、嬉しくって天にも昇る様な気持ちで舞い上がった。


ところが――


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